令和8年度の診療報酬改定では、入院・外来・在宅を通じた一貫した栄養管理体制の評価が強化されました。多職種連携の中で管理栄養士の専門性を発揮すること、そして「口からおいしく食べること」を重視した低栄養対策の重要性が、より一層求められています。
本シリーズでは、栄養に関する主な改定ポイントを前編・後編に分けて解説します。
※本稿では主な改定内容を抜粋して掲載しています。詳細は厚生労働省の告示をご参照ください。
令和8年度診療報酬改定全体の基本方針
▶物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応
▶2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
▶安心・安全で質の高い医療の推進
▶効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
上記の観点から改定が行われ、物価高騰や人材確保の課題が続く中、持続可能な「全世代型社会保障」を実現し、医療提供体制を維持していくことが重要なテーマとなっています。
入院時食事療養費等の食事提供に関わる費用の引き上げ
出典:厚生労働省「令和8年診療報酬改定について」より
食材料費や光熱費の高騰を背景に、入院時の食事に関する費用が段階的に引き上げられてきました。
令和6年6月に30円、令和7年4月に20円の引き上げに続き、今回の改定では
・入院時食事療養費:40円
・入院時生活療養費:60円
の引き上げが行われました。
この改定は、医療における食事の重要性と、食事提供体制の維持を目的としています。一方で、増額分は患者の自己負担増にもつながるため、単なるコスト補填にとどまらず、給食の質の向上が求められます。
特別食加算に嚥下調整食が追加、特別料金の見直し
出典:厚生労働省「令和8年診療報酬改定について」より
入院時食事療養費における特別食加算に、新たに「嚥下調整食」が追加されました。これは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」を参考にしたもので、安全に食べられるテクスチャーと、食欲を促す見た目・食感の両立を目指した食事です。具体的には、常食と同等の盛り付けや香り、適切な温度、十分な栄養量への配慮が求められます。
また、算定にあたっては以下の体制整備が必要です。
・嚥下調整食分類2021に沿った食形態一覧の作成
・嚥下調整食の1日1食以上の検食の実施
・多職種によるミールラウンドやカンファレンスの実施
・嚥下調整食に係る責任者の適切な研修受講(実習を含む)
さらに、患者の多様なニーズに対応する観点から、行事食やハラール食などについて患者の自由な選択と同意に基づき、特別料金を設定できることが明確化されました。
リハビリ・栄養・口腔の一体的取り組み
出典:厚生労働省「令和8年診療報酬改定について」より
令和6年度に新設された取り組みが見直され、「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算1・2」として再編されました。これにより、これまで算定要件が厳しかった部分が緩和され、より多くの医療機関で算定が可能となりました。すでに取り組んでいる施設では評価が引き上げられ、未導入の施設でも参入しやすい仕組みとなっています。
また、新たに地域包括ケア病棟でも算定が可能となり、これまで包括化されていた入院時栄養食事指導料や栄養情報連携料の算定も併せて行えます。さらに、外部歯科との連携による「口腔管理連携加算(600点)」も新設され、リハビリ・栄養・口腔の一体的な介入がより一層推進されます。
心不全再入院予防継続管理料が新設
出典:厚生労働省「令和8年診療報酬改定について」より
急性心不全患者の再入院予防を目的として、「心不全再入院予防継続管理料」が新設されました。入院早期から多職種が介入し、退院後も地域と連携して継続的に管理を行う体制が評価されます。専任の医師・専任の看護師(または保健師)・管理栄養士で構成される「心不全再入院予防チーム」が、ガイドラインに基づいてリスク評価と指導計画の作成を行います。「管理料1」は入院中に1回の算定ですが、1,000点と高い評価が設定されており、早期介入の重要性が明確に示されています。
経腸栄養管理加算の緩和
出典:厚生労働省「令和8年診療報酬改定について」より
令和6年度改定で新設された経腸栄養管理加算は、対象患者が限られ算定が難しいという課題がありました。今回の改定では要件が見直され、より実態に即した内容となりました。これまでは「入棟前1か月間に経腸栄養が実施されていないこと」が要件でしたが、入院前から経口摂取が困難な場合、もしくは入院後2週間以上経口摂取が不可能となった場合に算定が可能となりました。これにより、中心静脈栄養から経腸栄養への移行をより適切に評価できるようになり、臨床現場での活用が進むことが期待されます。
現場で感じていることや今後求められること
現場で積み重ねてきた栄養管理や多職種連携の取り組みが、今回の改定で評価として示されたことに、手応えと喜びを感じています。一方で、人手不足や時間的制約の中で、その質を維持・向上させ続ける難しさも依然としてあります。今後は、早期からの介入と退院後を見据えた継続支援がさらに求められ、管理栄養士には臨床判断力と連携力、そしてアウトカムで示す力が不可欠になります。制度の追従にとどまらず、実践の質を高め続ける姿勢がより重要になると感じています。
参考文献
厚生労働省:「令和8年診療報酬改定について」厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html(閲覧日:2026年5月3日)
日本栄養士会:「令和8年診療報酬改定のポイント」、日本栄養士会、https://www.dietitian.or.jp/data/medical-fee/r08/(閲覧日:2026年5月3日)
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